2017年12月18日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第231回です。

 

 

【俳句】

 

 

日記買ふ・余命宣告・受けし日に (多摩市 芳駿悟)(大串章選)

 

 

(神なき国の自分への存在証明。)

 

 

美しく・散る庭落葉・夫(つま)は掃く (小樽市 遠藤嶺子) (稲畑汀子選)

 

 

(この微妙なすれ違い(の放置)はかなり深刻だ。)

 

 

狐火を・信じる婆の・長寿かな (秋田市 中村榮一)(金子兜太選)

 

 

(筆者はこのことを肯定したくない。この老婆はやはり不幸なのではないか。)

 

 

冬日向(ひなた)・蠅も時には・友となり (川口市 青柳悠)(長谷川櫂選)

 

 

(わずかなぬくもりの共有による連帯感、それが(人間にとっても)つながりの原点。)

 

 

【短歌】

 

 

この人の・命令つねに・絶対で・伝うるわれが・悪者となる

 (名古屋市 長尾幹也)(馬場あき子選)

 

 

(忠実と信じる伝達者がかくのごときであることにトップの孤独がある。)

 

 

「おすまふさん、・けふ来なさった」と・母は言ふ・九州の隅の・介護施設に 

(北九州市 島津裕子)(佐佐木幸綱選)

 

 

(「おすまふさん」は存在すること自体に意義がある。この本質を忘れたPTA的議論に辟易。なお、「ふ」の3連発の魅力は指摘しておきたい。)

 

 

もう一度・ゆっくり言って・くれないか・核もつ国が・持たせぬ理由

 (守口市 小杉なんきん)(永田和宏選)

 

 

(合理的説明が不可能な世界で生きていかざるをえない小国という認識をあらためて促される。説明はそもそも不可能、世界秩序は理不尽なのだ。)

 

 

差入れ窓に・小さき荷置き・記帳する・赤子抱きたる・束髪(そくはつ)の女(ひと)

 (神戸市 乾外志)(永田和宏選)

 

 

(これは現実なのか、作者の夢なのか?現実だとすれば作者は刑務所職員か?)