2017年8月28日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第215回です。

 

 なお、知り合いから通報があったことを1つ短歌にしてみました。

 

 「埼玉が・初優勝して・名優の・花沢徳衛・思い出さるる」

 

さて、

 

 

【俳句】

 

 

凌霄(のうぜん)の・色の限を・日に競ふ (神戸市 池田雅かず)(稲畑汀子選)

 

 

(凌霄とは霄(そら)を凌(しの)ぐの意であろう。ノウゼンカヅラの橙色、小生も好むところ。)

 

 

老いといふ・泉に耳を・澄ましけり (三郷市 岡崎正宏)(長谷川櫂選)

 

 

(その境地には未達だが、そこに豊かな清涼感があるような予感はする。)

 

 

禿頭の・降りて行きたる・井戸浚ひ (新座市 五明紀春) (長谷川櫂選)

 

 

(実見したことはないが、なんと俳味あふれた光景ではないか。)

 

 

【短歌】

 

 

 死ぬときは・どうでもいいやと・いふやうに・蝉のかたちは・土に近づく 

(生駒市 辻岡瑛雄) (馬場あき子選)

 

 

(蝉というのはよく死に様をさらすもの。作者はそれをずっと見続けた、そして……。)

 

 

真昼間の・商店街を・横切りて・鼬(いたち)の消えし・シャッターの露地 

(直方市 永井雅子)(馬場あき子選)

 

 

(キリコの世界が現実にある。)

 

 

三枚の・布団に家族・五人寝て・真夏の夜の・マティスのダンス 

(東京都 黒河内葉子)(佐佐木幸綱選)

 

 

(キリコの次にマティスが来た。ボディーラインまで目に浮かぶ。)

 

 

線香花火の・火の玉ぽとり・地に落ちて・小さき闇が・子らをつつめり

 (福島市 新妻順子)(永田和宏選)

 

 

(闇を知らないで育つ子が増えているのではないか、世界の半分を。)