2017年6月26日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第206回です。

 

 

【俳句】

 

 

夏痩せて・父の頬骨・我にあり (横須賀市 榎本二郎)(長谷川櫂選)

 

 

(言うまでもなく、それは老いたる頬骨。)

 

 

母を追ふ・軽鳬(かる)の子何も・疑はず (東京都 山内健治)(大串章選)

 

 

(「かる」とはかるがも。人間の場合、ほほ笑ましいではすまない。疑わなければならない。それは自分を疑うことでもある。)

 

 

香水や・数多(あまた)の敵の・中をゆく (埼玉県伊奈町 吉野利美子)(大串章選)

 

 

(自己主張とは他の自己主張との戦さなのだ。)

 

 

【短歌】

 

 

 みなづきの・雨はひとしく・降り注ぐ・いま散るものに・いま咲くものに 

(福島市 美原凍子)(永田和宏選)

 

 

(天からのメッセージを感知する人は豊かだ。)

 

 

満員の・電車は砂漠・青年は・スマホの画面・みずうみにする 

(神奈川県 九螺ささら)(馬場あき子選)

 

 

(一度は人にまみれたスマホのみずうみは、天のメッセージを伝えられるのだろうか?)

 

 

梅雨入りを・サンショウウオは・知らぬまま・岩かげにてかげ・そのものになる 

(神奈川県 九螺ささら)(佐佐木幸綱選)

 

 

(梅雨入りだなどと言って騒ぐのも、これまた人のこと。)