2017年4月24日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第198回です。
【俳句】
犬にほえ・られ遠足の・列歪む (高山市 大下雅子)(大串章選)
(一事をもってどんな遠足かを語る、すぐれ句。)
蕗の葉に・雨宿りする・子猫かな (横浜市 神尾幸子)(大串章選)
(出来過ぎの感があるが、その場に直面したら一句にせざるを得ないだろう。)
春愁を・抱へてゐると・思はれず (名古屋市 中野ひろみ)(稲畑汀子選)
(言われて驚く自分の迂闊。憂いなしなどあり得ぬことなのだ。)
【短歌】
道徳と・いう教科無き・フランスは・小学生より・哲学学ぶ
(諏訪市 小林幸子)(佐佐木幸綱選)
(「お年寄りに席を譲りましょう」が道徳、「なぜお年寄りに席を譲るのか」を考えるのが哲学。哲学なき道徳は押し付けだ。「教育勅語」なんていうのは、それ。)
涙ふり・泣けるがごとく・咲くという・仏蘭西に咲く・〈cerisier(しだれ) pieureur(さくら))は
(逗子市 織立敏博)(佐佐木幸綱選)
(しだれざくらを見る目が変わってしまう。)
教育勅語を・諳(そら)んじてゐる・園児にも・爺さん婆さん・ゐるであらふに
(長野県 小林正人)(佐佐木幸綱選)
(指摘されて気づく、そこに爺さん婆さん(=歴史)はゐないのだ。そういう根なし草的家族が入園させている。)
ギザギザが・意地悪そうな・形した・あなたの部屋の・鍵までにくい
(東京都 伊東澄子)(佐佐木幸綱選)
(そこまできたら、その鍵の形のギロチンで処刑だな。)
男なら・あの中にいたのよ・と老教師・学徒出陣の・映像を指す
(三島市 渕野里子)(馬場あき子選)
(「男」という言い方がはらむメッセージ、複雑。)