2017年3月20日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第193回です。

 

 

【俳句】

 

 

或る景は・たしかな記憶・春の夢 (香芝市 土井岳毅)(金子兜太選)

 

 

(春の夜の夢の如きはかなき人生、とはいえ、これだけはたしか、という記憶が、美しく、良いものである至福。)

 

 

あほあほと・言はれ続けて・卒業す (尼崎市 ほりもとちか)(長谷川櫂選)

 

 

(旧仮名が使われていることからすれば遠い記憶なのであろう。すでに浄化されている。)

 

 

太陽に・鍬(くわ)ふり上げて・耕せり (新居浜市 三浦八重子)(大串章選)

 

 

(相当に勇ましい姿。もしかすると耕しているのは作者本人ではなくて、どなたかの記憶なのではないか?)

 

 

【短歌】

 

 

 春雨に・光る木の芽や・猫の耳・聞きたいことだけ・聞いている耳

 (アメリカ ソーラー泰子)(馬場あき子選)

 

 

(前段と後段の関係を考えさせられた。猫の耳が木の芽に似ているという発見がまずあったのでは?)

 

 

 もんじゃ焼き・たこ焼きそれとも・ますの寿司・考えている・四月のランチ 

(富山市 松田梨子)(佐佐木幸綱選)

 

 

(進学が東京か大阪か地元か、ということにちがいない。)

 

 

「来世は・この地に生まれて・来るなよ」と・被曝牛舎に・老婆の声が

 (いわき市 鈴木愛子)(永田和宏選)

 

 

(ふるさとをここまで思わなければならない事態に至らしめた責任は極めて重い。)