2017年2月6日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第187回です。
【俳句】
せせらぎの・明日は大河の・春の水 (埼玉県川島町 小林里美)(長谷川櫂選)
(平凡な発想のようだが、この水が荒川か利根川になると思えば、やはり感慨深い。)
山眠る・この世に何も・無き如く (大津市 辻童舟)(大串章選)
(戦争が起きようと飢餓が起きようと、何事でもないと思えば何事でもない。神・創造者がいるとすれば、その者にとってはそうであろう。)
独り居の・友の転居や・冬の雨 (生駒市 稲田慶子)(大串章選)
(独り居は、少なくとも気持ち的には、作者でもある。)
客席に・役者下りきし・初芝居 (東京都 丹羽ひろ子)(稲畑汀子選)
(めでたくって、うれしくって、万円札を胸にはさみたくなる気持ちがよくわかる。)
【短歌】
天に吊る・雪籠(ゆきかご)揺れて・京駆ける・たすきの女子を・降り隠したり
(東京都 松本知子)(高野公彦選)
(女子駅伝の忘れがたい光景、みごとに歌に残しました。)
あと四年・就任前から・待っている・その日が平和で・ありますように
(東京都 酒井明代)(永田和宏選)
(悪魔が4年、アメリカ大統領に居座る。対応キーワードは「survive」)
燃えさかる・二棟のどちらが・火元かと・尋ねる人に・みな無言なり
(町田市 高梨守道)(永田和宏選)
(いるいる、人間性の無さ、人格の底の浅さを、本人は気づかないまま、露呈している人。)
次に会う・日までトトロの・唄覚えん・二歳の彼女と・手をつなぐため
(神戸市 康哲虎)(永田和宏選)(佐佐木幸綱選)
(きびしい歌を詠っていたこの人に、こんなやさしい、せつない気持ちがあったか……)
紅梅の・下くる男と・目の合えば・不意に横向く・大欠伸(おおあくび)して
(横浜市 吉川米子)(馬場あき子選)
(他者として意識しませんというサイン。ほかにもいろいろあるが、「大欠伸」はおだやかなほう。)