2017年2月1日

 

 

 1939年8月、平沼騏一郎内閣は「欧州情勢、複雑怪奇」という声明を出して総辞職した。対ソ戦(ノモンハン事件)の大敗北、対ソ防衛政策の再建という大課題を抱え、ヒトラー・ドイツとの連携を模索しているさ中、敵(ソ連)と味方(ドイツ)が独ソ不可侵条約締結という形で手を結んでしまうという事態に遭遇し、外交防衛政策の大前提の崩壊という認識で、内閣総辞職をしたのである。

 

 

 トランプはやはり悪魔だった。人道主義的観点からも悪魔であり、自由主義市場経済という観点からも悪魔である。ついに日本の金融緩和政策、為替政策に対してもいちゃもんをつけてきた。アベノミクスの積極面は黒田バズーカ、それによる円安によってもたらされたものであった。これからの目玉にしようとしていたTPPを拒否されたのみならず、これまでの成果も御破算にされてしまう局面を迎えたのである。

 

 

 平沼内閣総辞職声明に照らせば、安倍首相は「トランプ、単純怪奇」という声明を出して総辞職してもおかしくない状況となっている。アベノミクスのみならず安倍首相の政策全般を批判してきた筆者からすれば「ざまぁ見ろ」と言って内閣総辞職を求め、安倍晋三個人の政界引退を求めたいところではある。

 しかし、このことをめぐって国内対立をしている場合ではない。相手は悪魔・トランプだからだ。日本を対象にした直接攻撃のみならず、短絡的アメリカ・ファースト政策によって世界全体が混乱することによって、日本は甚大な被害を免れない。

 トランプは1期、4年しか持たない。それでも被害は甚大だが、1期4年でしかないことを忘れて、苦しまぎれにトランプに妥協するようなことは決してあってはならない。たった4年の悪魔のために日本が取り返しのつかないことになってしまってはいけないのである。

 

 

 そのためには国内政争は一時休戦としたほうがいいだろう。対トランプ面従腹背政策の面として安倍を使うことも考えなければならないだろう。民進も共産もそのくらいの腹をもたなければならない。安倍自身も我慢が必要だ。お互いに愉快ではないが、事態はそれほど重大である。日本の「survival」がかかっている。