2016年12月26日

 

 

 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第182回です。

 なお、正月2日は俳壇、歌壇は休みだそうです。皆様、よいお年を!

 

 

【俳句】

 

 

 植林へ・一世(ひとよ)を尽くし・雪に逝く (群馬県東吾妻町 酒井大岳)(金子兜太選)

 

 

 (無私の一生には清らかな死という報いがある。)

 

 

 ゆるびゆく・老いの身揺るる・柚湯(ゆずゆ)かな (高山市 直井照男)(長谷川櫂選)

 

 

(痩せて老いるとわずかな水温、水圧の変化を感じることができるようになるわけだ。)

 

 

白息や・生きる力を・母に得し (船橋市 斉木直哉)(長谷川櫂選)

 

 

(自力という慢心を消してくれる母。)

 

 

「亡びるね」・寸鉄のごと・漱石忌 (土浦市 宮本優)(長谷川櫂選)

 

 

(日本はどうなるかという三四郎の質問に老人の口を借りて漱石はこう答えたのだ。スルドイ!)

 

 

久女にも・ノラにもなれず・葱を抜く (茅ヶ崎市 清水呑舟)(大串章選)

 

 

(「葱を抜く」にゆるやかな自己肯定感がある。久女は杉田久女、ノラは人形の家のノラ。)

 

 

枯蟷螂(かまきり)・能面のごと・笑ひけり (東京都 我妻勝美)(大串章選)

 

 

(蟷螂は実に不気味な顔をして笑って刃物を振り回している。)

 

 

あまりにも・似合ひて憮然・ちやんちやんこ (伊万里市 萩原豊彦)(稲畑汀子選)

 

 

(攻撃精神、チャレンジ精神を忘れないことですな。)

 

 

【短歌】

 

 

 杖をつき・大型船の・船底の・事故死の現場に・行きて経読む 

(三原市 岡田独甫)(佐佐木幸綱選)(高野公彦選)

 

 

(変わらずに今もある労災の基本型。労災無惨。)

 

 

 マグカップ・取っ手にひとさし・指をかけ・すこし未来と・ゆびきりげんまん 

(神奈川県 九螺ささら)(高野公彦選)

 

 

(何を決めたのかな?うらやましい。)

 

 

道草で・いつもとちがう・帰り道・とこやのうらに・いっぱいタオル 

(東金市 矢口理依)(高野公彦選)(馬場あき子選)

 

 

(床屋のやっていることのすごさに驚く。道草が教えてくれるいい勉強。)

 

 

口閉ざし・ゐし蛤(はまぐり)の・やはらかき・朝光(あさかげ)にふと・くちびる開けぬ 

(前橋市 荻原葉月)(馬場あき子選)

 

 

(歌全体がやはらかで、透明。)

 

 

邪魔がある・ことを恋だと・悟りけり・君と暮らして・愛育めば 

(筑後市 近藤史紀)(馬場あき子選)

 

 

(ういういしい歌いっぷり。作者は男性でしょうね、女性かな?)