2016年11月13日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第176回です。
【俳句】
芭蕉忌や・新幹線の・ひとり旅 (立川市 星野芳司)(大串章選)
(表現者・芭蕉は表現する自分がない現代の老人ほど孤独ではなかったはず。)
飛ぶといふ・よりも吹かれて・冬の蝶 (枚方市 中嶋陽太)(稲畑汀子選)
(ここにも我が身を見る、か。)
草の絮(わた)・いのちを風に・あづけたる (大阪市 山田天)(稲畑汀子選)
(「冬の蝶」のあとは「草の絮」となるわけだ。)
ハグをする・人に違和感・おでん食う (横浜市 岩佐正己)(金子兜太選)
(「遅れて来た老年」、突っ張るほどのこともない。)
秋の夜や・点(とも)して車庫へ・入る電車 (相模原市 中村小城南)(長谷川櫂選)
(一仕事終えた後のわびしき姿。「点して」いるから少し前の余韻があってかえってわびしい。)
【短歌】
期限切れの・仲間がうろつく・期限切れ・弁当狙って・深夜二時です
(ホームレス 坪内政夫)(高野公彦選)
(生活の悲しき知恵。悲しき中にも発見の喜び。弁当のみならず我々も期限切れだ。)
戻りたい・同じ電車に・乗りたくて・二時間早起き・してた夏の日
(八幡浜市 大下まゆみ)(永田和宏選)
(戻りたいのはそういう気持ち。戻らせないのは男たちの魅力の無さ。)
釣る人も・橋に凭(もた)れて・見る人も・男ばかりよ・鮭上る川
(水戸市 檜山佳与子)(永田和宏選)
(その景色、女性たちにはどう見えているのだろう?前歌コメントに関連。)
今はもう・帽子掛けです・あの頃は・僕のすべてで・あったギターよ
(筑後市 近藤史紀)(馬場あき子選)(佐佐木幸綱選)
(2番目の歌に続く青春喪失歌。それぞれまだ青春期の方のような気がするが。)