2016年10月24日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第173回です。
【俳句】
色鳥や・口に指当て・妻を呼ぶ (芦屋市 戸田祐一)(稲畑汀子選)
(発見とは知らせる喜びである。「色鳥」はやってきた渡り鳥。)
暁の・蜘蛛の囲より落つ・星滴 (石川県能登町 瀧上裕幸)(金子兜太選)
(朝露の蜘蛛の巣は天球図のようである。)
自然薯は・掘り起こされて・死んだふり (栃木市 増山ちさ)(長谷川櫂選)
(その後の活躍があるからこういう印象になる。)
棺の中・菊人形の・ごとき姉 (三次市 錦武志)(長谷川櫂選)
(ひそかな誇りだった美人の姉、逝く。)
【短歌】
あなたには・透明人間の・われなれど・熱き血潮も・牙もあります
(鹿嶋市 児矢野雅恵)(永田和宏選)
(短歌、俳句の攻撃性というものにもっと期待したい。)
ふくしまは・黄金の穂波・揺れるころか・赤とんぼ舞う・わが里を恋ふ
(国立市 半杭螢子)(佐佐木幸綱選)
(平凡な叙景がかえって、単なる望郷でなく、喪失でもあることを強く訴える。)
卒寿とふ・自負も自戒も・遠ざけて・誰かに甘えて・みたき秋霖
(名古屋市 林和枝)(高野公彦選)
(これから歳を重ねても、心が変わるわけではないのだな、と教えられる。)