2016年9月22日

 

 

 19日安倍首相はニューヨークでの難民・移民に関する国連サミットに出席し、今後3年間で2800億円規模の人道支援などを行うと表明した。シリア、北アフリカなどからの難民・移民の受入れ国となって大きな負担を余儀なくされている国々に対して、当事国とならずにすんでいる日本が、関係国が難民・移民を受け入れるという理念に賛同し、その負担の一端を担うという。その姿勢は、国際社会の一員として当然のことであり、誠に結構なことと評価できる。日本は、難民・移民の民族、発生地域、発生理由等を問うことなく、この問題についての揺らぐことなき姿勢を貫くべきである。

 

 

 この問題に関する日本の姿勢の確認が必要に思われる。それは北朝鮮からの難民発生が頭にあるからである。

 北朝鮮の核・ミサイル開発が継続され、瀬戸際外交が続くのであれば、早晩(ここ数年のうちに)、米・韓両軍は北朝鮮直接攻撃を実施するであろう。(中国がそれに軍事的に抵抗することができないよう外交的に外堀が埋められつつある。)作戦は核ミサイル基地その他主要軍事基地、金正恩のいる政権中枢等を一挙に壊滅させる電撃作戦となる。しかしながら、一部の彰義隊的部隊は残存するから地上戦は不可避であり、少なくとも北朝鮮国内は戦場となる。北朝鮮からの大量難民の発生は必至である。

 

 

 これら難民は最終的には開発支援により北朝鮮地域に吸収されるべきものではあるが、一定期間の難民受入れは不可避と考えておかねばならない。

 そして、その受入れ国として韓国、中国は当然のこととして、日本も難民受入れ国となる覚悟を固めておかなければならない。

 北朝鮮という大リスクの除去について、日本が直接武力行使を行うことは憲法上まったく不可であるが、そのメリットを負担なしで享受することはさすがにできない。資金援助と後方支援という狡猾な手段だけで済ますこともできない。大リスクの除去のコストとして、日本社会に数十万規模の北朝鮮難民の受入れという負担は避けがたきものと考えておかなければならない。

 

 

 この点に関しては実は1119号(本年1月20日)においてすでに指摘したところである。そして、ことあるごとに準備の必要を説いているのであるが、筆者にとっては誠に意外なことであるが、難民受入れを拒否する意見を言う人が多いのである。きつく言えば、そのような意見は国際関係についてのまったくの音痴、外交センスの欠如というほかはない。もし日本がいよいよの時にそのようなエゴイスティックな態度をとったすれば、国際社会で日本はもはや相手とされず、世界の孤児となるであろう。

 

 

 今回の国連サミットで日本が表明した精神は普遍的なものであるべきであり、、東アジアでも当然適用されるべきものである。そうでなければ国連サミットでの安倍首相の表明は国際的にとても恥ずかしい、理念なき、御都合主義的表明ということになる。