2016年8月22日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第164回です。
【俳句】
雲の峰・遊ぶ心の・湧きにけり (秦野市 小巻一吉)(大串章選)
(よくもまあ、毎日毎日遊んでいられたものだ。何をしてたのかはよくおぼえていない。)
おほきにと・涼しく別れ・行かれけり (芦屋市 酒井湧水)(稲畑汀子選)
(そういふことで世の中は収まっていくのでせう。)
遠雷や・戦(おのの)く薔薇に・水やりぬ
(オランダ モーレンカンプふゆこ)(金子兜太選)
(他に施すとき、余裕があるわけではない。むしろ共感する相手を求めているのだ。)
蟇(ひき)鳴くや・こんにやく村の・外厠(かわや)
(富士宮市 渡邉春生)(金子兜太選)
(臭いますね。)
【短歌】
目蓋(まぶた)なく・目を閉じられず・死んだまま・世界が消えるのを・見つめる鰯
(神奈川県 九螺ささら)(高野公彦選)
(人が目をあいたまま死ぬのは死ぬのを驚いている場合だろうか?)
殻を脱ぎ・切れずに蝉の・白き身の・蟻にまみるる・静かなる朝
(神戸市 杉岡壱風)(馬場あき子選)
(世の中は、静かな朝も、残酷に満ちている。)
スベリ台・上は父親・下は母・横を守るは・じじばば二人
(桶川市 岩崎實)(佐佐木幸綱選)
(ほほえましい、とは言えない、むずかしい問題を感じてしまう。)
天国に・見えそうな程・晴れ渡る・加州の空は・残酷である
(アメリカ 郷隼人)(佐佐木幸綱選)
(作者は加州の獄にいる。空はそんなことはおかまいなしに晴れ渡っている。)