2016年7月25日
朝日新聞俳壇・歌壇からの印象句、印象歌の報告、第160回です。
【俳句】
こらへたる・涙の如く・滴(したた)れり (横浜市 橋本青草)(大串章選)
(「如く」とあるが、実際に涙をこらえているのではないか。)
大夕立・鉄筋工は・まだ上に (多摩市 田中久幸)(大串章選)
(すぐには下りてこられないようなデカい建設現場、その上に突如黒雲が現われて……、たしかに大夕立だ。)
似合ひたる・我にびつくり・サングラス (伊万里市 萩原豊彦)(稲畑汀子選)
(年取ってから自分のやくざ心を知る。そういうまじめ人生の人もいる。)
【短歌】
一畳の・守衛室にて・一日(ひとひ)勤む・一首浮かべば・推敲無限
(横浜市 鶴川博)(高野公彦選)
(それが頼りになることをわかっていても、覚悟はなかなかむずかしい。)
君ときた・君のふるさと・君のまち・あの日の君は・ふたつとしうへ
(倉敷市 高谷信一)(永田和宏選)
(ふたりの誕生日の関係で年齢差が1つか2つ、2つか3つになる。「ふたつとしうへ」でふたりには季節がわかる。)
輪になって・歌うコーラス部・真ん中で・首を振る・一台の扇風機
(富山市 松田梨子)(永田和宏選)
(扇風機に人格を感じる場合は多い。コーラスに合わせる音楽的扇風機もいた。)
愛犬を・丸洗ひして・木につなぐ・二人ぼっちの・夏の夕暮れ
(笠間市 北沢錨)(馬場あき子選)
(わあわあとひと仕事をした後の静寂。「ぼっち」の心が募る。)