2016年7月18日

 


 朝日新聞俳壇・歌壇からの印象句、印象歌の報告、第159回です。

 


【俳句】

 


なきながら・喰らふ飯あり・夏休み  (札幌市 村上紀夫)(長谷川櫂選)

 


(集団疎開の思い出か?合宿、林間・臨海学校のたぐいではないようだ。)

 


山風の・高さめざしぬ・今年竹 (姫路市 英賀美千代)(大串章選)

 


(今年竹の成長の速さへの驚き。)

 


西へ西へ・吾を誘ふ・道をしへ (向日市 松重幹雄)(大串章選)

 


(「道をしへ」はハンミョウという甲虫。「西へ西へ」は言うまでもなく西方極楽浄土だ。)

 


フクシマと・呼ばれて五年・蟻地獄 (上山市 石井浩吉)(金子兜太選)

 


(名前の違う別の蟻地獄に落ちている人々にフクシマが見えない。)

 


【短歌】

 


結(ゆい)終へて・早苗饗(さなぶり)となる・一村に・越中富山の・紙風船来る

 (霧島市 秋野三歩)(永田和宏選)

 


(現実のことだろうか?幻想の農村風景だろうか?)

 


故里(ふるさと)の・無人駅舎の・軒下に・使われぬまま・台秤(だいばかり)あり

 (岡山市 奥西健次郎)(永田和宏選)

 


(盛んに農産物が出荷されていた当時の名残。小さな投資の失敗の残骸。)

 


病院の・待ち合い室で・意気統合・アジサイ寺の・石段昇る 

(山陽小野田市 木漏便五郎)(馬場あき子選)

 


(病人文化もまた多彩なり。)

 


迸(ほとばし)る・ものはあるかと・ホトトギス・火口のごとき・喉でまた鳴く

 (福島市 美原凍子)(馬場あき子選)

 


(そう迫られると筆者などはすごすごと引き下がるばかり。)