2016年5月30日
朝日新聞俳壇・歌壇からの印象句、印象歌の報告、第152回です。
【俳句】
一瀑の・上の一天・藤懸かる (長野市 縣展子)(大串章選)
(山の藤は人の届かないとんでもないところに咲く。)
白日傘・万葉歌碑を・動かざる (尾張旭市 古賀勇理央)(大串章選)
(教養深き美人を想像してしまう。)
高階に・緑は無くも・風薫る (横浜市 松永朔風)(稲畑汀子選)
(理屈上は無いはずだが有り得るように感じるのはなぜだろう。)
男って・もんはと云ひつ・草刈女 (霧島市 久野茂樹)(長谷川櫂選)
(殺意の句というのはもっとあっていい。)
【短歌】
霧雨に・赤錆濡るる・廃船の・舳先(へさき)に一基の・捕鯨砲見ゆ
(網走市 寺澤和彦)(永田和宏選)
(「つわものどもの夢の跡」。)
そんな歌・詠めばたちまち・官憲に・しよつぴかれると・言いし亡き母
(鴻巣市 佐藤竹次)(永田和宏選)
(話をしながら、時が来れば此奴は官憲に俺を売る人間だと感じることがよくある。)
緑濃き・生駒の山に・独り来て・姿の見えぬ・うぐいすを聞く
(生駒市 宮田修)(佐佐木幸綱選)
(「独り来て」があると万物がよみがえる、歌になる。)
五月雨が・秩父の山を・塗りつぶす・薄墨色に・塗り残しなく
(坂戸市 山崎波浪)(佐佐木幸綱選)
(塗りつぶしていく時間の経過がポイント。それを見続けていた作者。)