朝日新聞俳壇・歌壇からの印象句、印象歌の報告、第148回です。

 【俳句】

 今年また・見納めとする・桜かな (船橋市 小川文章)(稲畑汀子選)

 (桜が季節の巡りを感じさせ、季節の巡りが人生の有限を感じさせる。ということは、のんべんだらりとしていれば、人生は無限だ!)

 〈国のため〉と・嘘を言ふな・聖五月 (静岡市 篠原三郎)(金子兜太選)

 (敵は我々を愚弄している。それに対する「怒り俳句」というジャンルを立ち上げようではないか!)

 草・蕨・・鶯・桜・・餅の春 (高槻市 山岡猛)(長谷川櫂選)

 (俳句に「・」を使われたので「・・」を使う。「食」とはモノを食うだけではないということ。)

 【短歌】

 七羽のうち・一羽残りし・白鳥に・二日後二羽来て・北へ連れ立つ 

                         (福島市 青木祟郎)(高野公彦選)

 (なんでも人事に考えてしまう人間の性(さが)というものがある。)

 原爆の・碑に献花して・丁寧に・手直しをする・ケリー長官 

                        (北九州市 四宮修)(高野公彦選)

 (微妙な問題はあるのだが、この人の態度はその後の会見を含めて誠実だった。対中、対韓を考える上で日本も学ばなければならない。)

 兵隊より・かへれる父の・しばらくは・自分(ずぶん)と己が・ことを言ひゐき 

                         (厚木市 櫻田稔)(永田和宏選)

 (戦争国家は人を変える。変えなければそうやすやすと人を殺すようにはなれない。しかし、人はやすやすと変わるのだ、それが怖い。)

 廃校の・夜の廊下を・ひた歩く・骨格標本・地に脚つかず 

                      (大和郡山市 四方護)(永田和宏選)

 (廃校に骨格標本を残すのは止めましょう!)

 死んだなら・月山にゆくとふ・爺さんに・雪解はまだと・諭す看護師

          (伊豆の国市 三浦文雄)(馬場あき子選)(佐佐木幸綱選)

 (ターミナル・ケアで、おのずと生まれた詩的会話。)