2016年3月28日



 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第143回です。



 【俳句】



 春愁を・草に寝かせて・くすぐりぬ (生駒市 上田博司)(長谷川櫂選)



 (「春愁」を思い切って「春愁の人」と読めばわかりやすい。くすぐられてキャッキャと叫べば春愁などは飛んでいく。)



 紅梅の・少女めきたる・林かな (群馬県吉岡町 中村延枝)(大串章選)



 (あまりにもお決まりのことながら、指摘されると感慨深い。)



 青空の・一点すべり・落つスキー (長野市 縣展子)(稲畑汀子選)



 (空からやって来る高梨沙羅ちゃん。)



 白寿の手・つつみてをりぬ・桜貝 (藤沢市 寺田篤弘)(金子兜太選)



 (この心が人を老いさせない。) 



 【短歌】  



 とりどりの・花の種袋・手に老兄(あに)は・除染の後の・土に蒔くとふ (福島市 美原凍子)(佐佐木幸綱選)



 (梵我一如。)



 本を読もう・映画を見よう・美しい・恋の終えかた・学べ、ストーカー (東京都上田結香)(高野公彦選)



 (たしかにそうは思うが、そうであるのも問題だとも思う。)



 育てたる・どの時期よりも・切なくて・古希の息子の・肩揉みてやる (春日市 村松初子)(永田和宏選)



 (子どもの老いと直面する母。長寿社会になってはじめて生じる「滅びるものを産んだ」という心理。)



 菜を買えば・キャベツ7500個を・捨てた農夫の・自死よみがえる (福島市 澤正宏)(馬場あき子選)



 (これを経済的なこととしか考えられない精神は貧しい。)