朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第137回です。


 【俳句】


 雪だるま・見せに小さき・訪問者 (鹿児島市 青野迦葉)(稲畑汀子選)


 (作者、鹿児島というのがポイント。)


 落葉掻く・木影のごとき・翁かな (沼津市 林田諄)(大串章選)


 (そんなふうに消えていくのがいいと思う。)


 凍蝶(いてちょう)の・あの世に行きて・戻りけり (長崎市 田中正和)(大串章選)


 (その蝶の臨死体験を是非聞いてみたい。)


 【短歌】  


 「パパいない」と・言ってるだろう・語を二つ・使える前に・別れた幼児(おさな)は (八尾市 吉谷往久)(永田和宏選)


 (この世界が歌われることは極めてまれではなかろうか。)


 十年間・皿をくるんだ・新聞紙・3・11(さんいちいち)を・知らぬ無邪気さ (浜松市 石田佳子)(佐佐木幸綱選)


 (今もまた、十年後から見れば無邪気、ノンキにちがいない。)


 トイレまで・わずか数歩の・距離なれど・肩にくい込む・夫(つま)の両手哀し (大阪市 三浦サユリ)(佐佐木幸綱選)


 (「肩にくい込む」が多くを語る。)


 子の発表に・大きくうなずく・女教師の・カツラ傾き・教室なごむ (下関市 乗安勉)(佐佐木幸綱選)


 (なごんでよかった。凍る場合もある)


 昨日より・寒い朝だと・いうだけで・抱きしめあえる・姉と妹 (高槻市 有田里絵)(高野公彦選)


 (絵にしたいような美しさ。)