2016年1月18日


朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第133回です。

 

【俳句】


 帰省して・所在なき子の・焚火かな (福岡市 加藤秀則)(金子兜太選)


 (焚火とは作業をしているような感じもあるのでちょうどいいのだ。)


 義士の日に・誘ひ合ふ友・ありにけり (弘前市 千葉新一)(金子兜太選)


 (原点はチャンバラという友が男にはいるものだ。過去形が悲しい。)


 小人(しょうじん)が・大臣致し・年終る (岐阜市 阿部恭久)(金子兜太選)


 (小人がいるのではなく、閣内は小人ばかりという国家的悲劇。)


 物をいふ・猿になるべし・年新た (福津市 吉田ひろし)(長谷川櫂選)


 (中身を明らかにせずして憲法改正などという。こんな悪意に満ちた企みにものを言わずにはいられない。神よ、我に言葉を与えよ!)


 【短歌】  


 難民の・父子ベルリンの・市場(マルクト)に・回転木馬に・乗りていこへり (埼玉県 酒井忠正)(馬場あき子選)


 (「自転車泥棒」「鉄道員」、家族の不運は父子の姿に強く現われる。)


 日溜りに・家なき人の・まどろみて・上野公園・噴水寒し (川崎市 吉川清子)(馬場あき子選)


 (暖冬というので救われていたのに、今日は大雪、寒波襲来。家なき人にはきつい!)


 「ああしゃんと」・母親を呼ぶ・末の子よ・赤ちゃんでなく・なってしまう日よ (名古屋市 沢井晶穂)(佐佐木幸綱選)


 (若き母親の子を思う歌、まさに聖母の歌。)


 沈めても・沈めても浮く・柚子三個・おたふく癒えた・児を喜ばす (茅ヶ崎市 藤原安美)(佐佐木幸綱選)


 (前の歌と同様、聖母の歌。聖母なるがゆえに経験できる至福の場面。)


 また連絡・しますと優しく・残酷な・言葉を受けて・待つ日始まる (横浜市 中西紀子)(高野公彦選)


 (メールの言葉使い、むずかしきかな。)