2015年11月23日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第126回です。
【俳句】
冬ぬくし・けふも祖父母は・児の家来 (福山市 廣本貢一)(金子兜太選)
(かなり若々しい人でも孫ができるとこうなっている。)
落ち葉なほ・命たのしみ・風と舞ふ (枚方市 鈴木七郎)(長谷川櫂選)
(もはや小生はその段階かもしれぬ。)
花八つ手・信義の人の・無名なる (高岡市 野尻徹治)(大串章選)
(有名になってしまったら人の目が気になる。人の目を気にするから有名になるのか?)
七五三・家族の未来・華やぎて (寝屋川市 岡西恵美子)(稲畑汀子選)
(あまりにもめでたしめでたしの情景はかえって不安をはらむ。)
【短歌】
大いなる・投網を天(そら)に・打ちしごと・椋鳥(むく)の群れ飛び・霜月に入る (舞鶴市 吉富憲治)(馬場あき子選)
(曇天に展開する黒い影、厳しい寒さへの予感。)
白檜曽(しらびそ)の・森しづかにて・蟷螂は・とらへし茜蜻蛉(あかね)を・天にかざせり (ひたちなか市 篠原克彦)(佐佐木幸綱選)
(成果を見てくれるもの、天のほかなし。蟷螂の孤独。)
一家なす・雀の群れに・飯撒いて・家族の中に・入れてもらひぬ (八王子市 間渕昭次)(高野公彦選)
(本来人間は群れる動物なのに、ひとり居の人間の孤独。)
船底を・転がる樽に・なったよう・きみを目指して・自転車を漕ぐ (長野市 小山美由紀)(高野公彦選)
(古今東西の恋愛歌のなかでもこれだけの迫力あるものはないのではないか。)
困ったな・施設に入る・母なれど・父と同じ所は・嫌だと言う (宮崎市 大田原良治)(永田和宏選)
(ちょっとは困るかもしれないけれど、もはや深刻ではない。)
イケメンと・いわれるゴリラ・人類に・見られて終わる・生しか知らず (摂津市 内山豊子)(永田和宏選)
(男丈夫を檻に入れて見世物にする、その残酷を人類は自覚していない。ISもこの線で考えてみる必要がある。)