2015年11月8日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第124回です。
【俳句】
まづ胸に・始まる秋で・ありにけり (飯塚市 釋蜩硯)(長谷川櫂選)
(愁いがあって秋を知る、か。「愁」は秋の心と書く。)
火の中で・笑うたやうな・秋刀魚かな (横浜市 西ケ谷将雄)(長谷川櫂選)
(口を開けて、間抜けな顔だ。残酷感が薄らぐ。)
夜もすがら・歯をとぐ鼠・冬が来る (竹原市 岡元稔元)(長谷川櫂選)
(この鼠と一冬を過ごすことになるのだな、との思い。)
【短歌】
話せた日・すれ違った日・見かけた日・なんでもなかった・十四歳の日々 (富山市 松田わこ)(馬場あき子選)(佐佐木幸綱選)
(そんなことで一喜一憂していた時代があったものだ。「なんでもなかった」などとは思いもしなかったが……)
ともす灯の・家の数だけ・媼(おうな)居て・山懐(やまふところ)に・秋は闌(た)けゆく (霧島市 久野茂樹)(佐佐木幸綱選)
(灯のともらない家が多くあり、また男は全滅している。)