2015年11月2日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第123回です。


 【俳句】


 玉ならば・髪に飾らん・烏瓜(からすうり) (東京都 廣川風韻)(長谷川櫂選)


 (捨てがたき極上の赤漆。)


 車窓より・先へ先へと・鰯雲 (長崎市 徳永桂子)(大串章選)

 (鰯雲の空の広さ。)


 ひたすらに・露の世励み・余生なし (山梨県身延町 上田正久日)(稲畑汀子選)


 (俳句をひねる余裕があれば、その程度でいいのではないか。)


 月影や・六十余軒の・空家あり (えびの市 川野一広)(金子兜太選)


 (月というのはしばしば凄絶な景色を成す。現代日本の何千何百の集落の姿。)


 【短歌】  


 新居にて・明かりのスイッチ・探す手が・引っ越し前の・場所を撫でてる (新潟市 安倍淑子)(佐佐木幸綱選)


 (筆者、昨日転居。)


 活躍を・怠るならば・そのときは・マイナンバーもて・呼び出さるるや (東京都 上田国博)(佐佐木幸綱選)(馬場あき子選)


 (時事ものに歌心をもたせるのはむずかしいものだが、この歌には「やけくそ」という歌心がある。)


 軍曹や・伍長は特進・後の位(くらい)・戦没の地は・北支・南方 (東京都 上原厚美)(永田和宏選)


 (戦死は1階級特進。敗戦でも1階級特進した。それで恩給も違った。)