2015年10月26日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第122回です。
【俳句】
アベ政治・落葉の如し・鼻毛抜く (三郷市 岡崎正宏)(金子兜太選)
(鼻毛扱いは極めてよしとすれども、敵は落ち葉の如しとは決して言えぬしたたかさぶりである。ゆめゆめ御油断めされるな。)
追いかけて・きさうな夜の・案山子かな (山形県最上町 松田佳津江)(長谷川櫂選)
(闇での動物、とりわけ人間は怖い。)
露の世や・小面(こおもて)のごと・母眠る (大野城市 佐竹三紀枝)(大串章選)
(静かに若返っていく母親を見る娘。)
秋天に・海は波もて・応えをり (岡山市 伴明子)(稲畑汀子選)
(ことばは日本的だが、描かれた世界はギリシャ神話的スケール。ゼウスとポセイドン。)
【短歌】
秋の夜を・妄想澄めり・金すべて・女性に貢ぎ・棒に振る生 (和泉市 長尾幹也)(馬場あき子選)
(妄想?作歌動機を推測すれば、決して素直には読めない。)
七十年・経ても脳裏ゆ・消えやらぬ・われをかばひし・かの餓鬼大将 (大阪府 金忠亀)(馬場あき子選)
(そういう「餓鬼大将」は大人になると何故いなくなるのだろうか?それが問題だ。)
エレベーター・往復させる・ほど偉い・人間なのか・五階の私 (名古屋市 茶田さわ香)(永田和宏選)
(まあむずかしく言えば、これが先進国の一人あたりの生産性の高さゆえということになるのですな。)
五能線の・最終列車の・過ぐる音・聞きてひと日の・灯消せり (五所川原市 千葉育子)(永田和宏選)
(何と多くのことを語る短歌であろうか。ちなみに五能線最終列車の五所川原通過は上り下りとも22時6分。)