2015年9月28日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第118回です。
【俳句】
地に在りて・毬栗(いがぐり)・しかと刺さむ貌(かお) (上尾市 新井三七二)(金子兜太選)
(木から落ちても手に取るものは刺すぞという毬栗の挑戦的姿勢。老人の心意気か?)
和を以て・疲れ果てたる・敬老日 (平塚市 日下光代)(長谷川櫂選)
(雰囲気があらかじめ設定されている場というのはあるものだ。その演出に参加者は応じなければならない。)
踏切の・今日は賑やか・地蔵盆 (八尾市 岡恭介)(大串章選)
(もはや通る人も少なくなった小さな踏切、お盆の行事でなつかしく通る。)
萩の花・風を力に・起き上がる (熊本県菊陽町 井芹眞一郎)(稲畑汀子選)
(萩は不思議なくらい自らの秩序をもたぬ。他人任せで花を誇るでもない。)
【短歌】
赤とんぼ・とまりたいけど・とまれない・とまってほしい・黒い牛の背 (いわき市 馬目弘平)(馬場あき子選)
(とまれば絵になる。もうなっているか?)
プロポーズ・された娘は・寝る前に・パジャマに着替え・指輪をはめる(寝屋川市 篠原智子)(佐佐木幸綱選)
(大事件の日の日常。そのかすかな違い。娘とその母親の静かなる幸福感があふれている。)
死に近く・父に負われて・家のなか・ひと巡りせる・祖父駒太郎 (高松市 菰渕昭)(高野公彦選)
(駒太郎さんは築き上げたという満足で成仏できる。だが、築き上げられなかった人はどうなるのか?)