2015年8月16日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第112回です。

 明日新聞休刊日ゆえ、1日早い俳壇、歌壇の掲載がありました。さすがに8月15日絡みの作品が多数ありました。


 【俳句】


 石見路の・夕立は峰々を・駆け下りる (浜田市 田中静龍)(稲畑汀子選)


 (ここはまだ降っていないのに、山のほうで降っている、まもなくここにも雨が来る。都会では味わえない雄大な景色。)


 亡き夫を・慈しむごと・袋掛 (千葉市 谷川進治)(稲畑汀子選)


 (夫が作っていた梨だろう。)


 生まれたての・跳躍朝の・青蛙 (養父市 足立威宏)(金子兜太選)


 (蛙は生まれたてで何と跳躍するのだ。)


 その中に・空の青あり・夏の月 (下関市 内田恒生)(金子兜太選)


 (たしかに昼の白い月にはライト・ブルーもある。)


 蟻地獄に・蟻を投げこむ・美少年 (相模原市 芝岡友衛)(金子兜太選)


 (少年少女にある残酷、そこに美のある事実。エロスとタナトスの同居。)


 一日の・終はりが見えぬ・暑さかな (札幌市 清水雅之)(長谷川櫂選)


 (猛暑は涼しさへの想像力を奪う。作者が札幌というのも今年らしい。)


 子どもらは・炭になりたり・原爆忌 (新潟市 伊藤敏)(長谷川櫂選)


 (力ある反戦俳句。まさに絶句。)


 三たびめは・黙するなかれ・敗戦日 (東京都 片岡マサ)(長谷川櫂選)


 (作者にとって「三たび」は何を数えるのだろうか?60年安保、70年安保、そして今回の新安保法制か?)

 


【短歌】   


 申し合はせた・やうに三人・出で来たり・「心よりお詫び・申し上げます」 (東京都 上田国博)(永田和宏選)


 (お詫びの記者会見、たしかに3人が多い。どういうことの結果だろう?)


 脱穀した・麦を筵(むしろ)に・干しゆけば・陽をいっぱいに・浴び光りいる (沼津市 岩城英雄)(馬場あき子選)


 (正統叙景歌の心地良さ。この景色、余命幾ばくぞ?)


 押しつけで・できた憲法と・言いながら・変える時こそ・押しつけである (登別市 松木秀)(馬場あき子選)


 (国民から湧き起る自然さというものが、新安保法制には皆無だ。与党が街頭に立てない理由はここにある。)


 空爆の・止みし月夜に・畑おこし・芋蔓植えた・十歳の夏 (福岡市 倉ノ前松)(馬場あき子選)


 (不思議な静寂、カラフルでもある。困苦を語ろうとして美しさが浮かび上がる、ということもある。)


 祖父の戦死・こころに在りて・娘らは・国会前へ・出かけて行きぬ (青梅市 圓城寺順子)(馬場あき子選)


 (子育てに成功し、娘を誇らしく思う母親の喜びの歌、といったら叱られるだろうか?)