2015年8月10日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第111回です。


 本稿作成中、70年談話に「侵略」「植民地支配」「痛切な反省」「お詫び」というキーワードが盛り込まれているというニュース。国民の勝利だ!


 【俳句】


 太陽で・あつたをんなに・夏来たる (西海市 前田一草)(長谷川櫂選)


 (「あつた」と過去形となっているところが引っかかる。特定の個人のことならわかるが。とはいえ、堂々とした佳句。)


 風鈴や・風の吐息を・見逃さず (西宮市 近藤六健)(稲畑汀子選)


 (この猛暑、人間には微風を感じる余裕なし。)


 父となり・積乱雲と・飲む麦酒 (糸満市 吉田八太)(金子兜太選)


 (父となった喜びの歌にそもそも接した記憶がないが、その喜びの歌としてこの句は歴史に残るものであろう。男としての一人前感。)


 つくづくと・憲法9条・蟇蛙 (東京都 高井高盛)(金子兜太選)


 (新安保法制、デモ、反戦関係の投稿が多い中で、自分のこだわり、頑固な気持ち、許せない気持ちを「蟇蛙」に託した秀句。突出している。)

 


【短歌】   


 「陸軍」と・いう映画あり・手を合わす・昔も今も・母は子のため (春日市 伊藤流水)(佐佐木幸綱選)


 (敢えて言う、今は感傷に浸っている時ではない。子のために今は行動すべき時だ。)


 強いられて・父が使いし・日本名・金子健太郎を・捨てた八月 (大阪府 金忠亀)(高野公彦選)(馬場あき子選)


 (改名を強いアイデンティティを奪っていながら、「侵略」を認めないなどという余地はない。この歌からアイデンティティ回復の高揚を逆読みせよ。)


 母寄りに・傾いている・ダーリンの・歯ブラシ直して・みたりする朝 (姫路市 原織絵)(高野公彦選)


 (これはほほえましいのではない。ここには明確に「自虐」がある。「母」「ダーリン」「みたりする」のバカバカしさに巻き込まれている自分。)