2015年4月27日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第96回です。
【俳句】
春愁や・独居老人・回し蹴り (東京都 鈴木勇)(金子兜太選)
(元気な老人は、かえってあやしいのである。)
春愁の・もとをたどれば・俳句かな (栃木県壬生町 あらゐひとし)(長谷川櫂選)
(何とはなしに、と思っても、やはり理由はあるのだった。)
春愁や・名を忘れ・顔残りゐる (武蔵野市 佐脇健一)(長谷川櫂選)
(健忘が春愁の理由とも考えられるが、名は忘れたが顔が浮かぶその人のゆえとも考えられる。
「初恋の・名前浮かばぬ・春の宵」か?)
春の昼・戦争がある・不思議かな (長岡京市 寺嶋三郎)(長谷川櫂選)
(満ち足りていればいくさは起きないはず。)
【短歌】
籠りいし・媼(おうな)と媼に・陽が差して・笑みのこぼるる・路地裏の春 (上越市 小林サチ子)(高野公彦選)
(いかに世が変わろうと、この平安をもたらす自然があるのが日本だ。)
「便器なぜ・汚した?」と荒き・声心身の・こわれ来しこと・説くが寂しき (川崎市 西田光)(佐佐木幸綱選)
(「声」のところで切れる。一方でこういう悲劇になすすべなしというのも日本だ。)