2015年4月14日
安保法制については自公の事前協議が終了し、あたかも微妙な調整が残っているだけかのような誤解が生じているが、決してそうではない。今後の調整によって我が国の将来は大きく左右される。
集団的自衛権の行使を可能とする「存立事態」については、これまで書いてきた(1107、1120、1121)ので、今回は自衛隊の他国軍への後方支援を随時可能とする新法、いわゆる後方支援の恒久法化である「国際平和支援法案」について書く。
問題の焦点は、我が国が後方支援を実施するにあたって必要とする国際的お墨付きとして具体的に何を要件とするかである。
国連安全保障理事会決議、国連以外の国際機関での意思決定が考えられる。もし国連以外の国際機関の意思決定を採用するとすれば、その国際機関としてどのようなものを認めるかが問題となる。
そしてもう一つの焦点である国会手続きについては、国際的お墨付きを何にするかの従属変数として決まってくるものと考えられる。
国連安保理の決議があるならば、緊急やむを得ない場合、国会の事後承認も許容されるだろう。
さて、問題は国連安保理決議がない場合である。その場合は他国軍への後方支援をするか否か、我が国にとって大問題である。
国連以外の国際機関での意思決定があったとしても、国連安保理レベルでは反対があるということである。
すなわち、いわゆる「ならず者国家」に対して国際的合意に基づき制裁を加える、その制裁活動の後方支援を我が国が行うというパターンではなく、ある陣営とある陣営との対立において我が国が一方の陣営に対して支援する、すなわち他の陣営に敵対するというパターンになりかねないということである。
これは政府だけの判断で実施していいことでは決してないだろう。国会の事前承認があったとしても問題であろう。二つの陣営に分かれた国際紛争への我が国の参加であり、我が国の中立性を犯すこととなり、後方支援にとどまることは困難と考えられるからである。
結論的に言えば、筆者の考えは国連安保理決議を要件とするべきというものである。アメリカは不満であろう。しかし、アメリカがいくら不満であろうと政治的にできないと言えばいい。これまでもアメリカの要請に対して我が国はそのように言って断ってきた実績があるのだ。
いずれにしろ、国際平和支援法案はこのような大問題をはらんでいる。自公が手を打ったからそれでおしまいというような生易しい問題ではない。
アジア・インフラ投資銀行参加問題の軍事版のような事態を警戒しなければならない。