2015年4月6日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第93回です。


 【俳句】


 雪形や・やがて消へゆく・農ならむ (春日部市 斉藤とし彦)(金子兜太選)


 (春が来て雪形が消える。政策によって農が消える。農が消えれば雪形という美しき慣習も消えるであろう。)


 男一匹・一年生の・花吹雪 (大野城市 佐竹三紀枝)(長谷川櫂選)


 (大人はもう忘れているけれど、一年生ともなればいっぱしの男気はできている。)


 春の灯に・遺影選びの・にぎやかに (群馬県吾妻町 酒井大岳)(大串章選)


 (大往生なれば、葬式は参加型のイベントだ。)


 【短歌】

 


 私には・子供もいるし・孫もいる・だけどやっぱり・あなたが恋しい (京田辺市 藤田佳予子)(永田和宏選)

 


 (「だけど」が古い、「そして」でいい。「やっぱり」もことさらだ、「朝から」なんていうのはどうだろう。)


 亡き父の・月命日を・酒の日と・定めて墓前で・一人酒飲む (三郷市 木村義熙)(馬場あき子選)


 (酒はやっぱり名目を要す。)


 飛び立ちし・白鳥二羽を・見送りぬ・夕月はるか・見のかぎりまで (小山市 関民子)(佐佐木幸綱選)


 (夕月があって広がりと透明感が生まれている。)


 雪ふぶく・秋田に時を・忘れおり・藤田嗣治の・巨大絵の前 (仙台市 沼沢修)(佐佐木幸綱選)


 (巨大絵の部分部分にひきつけられて時を忘れてしまうのでしょう。)


 猪檻の・酒粕食べた・小狸は・千鳥足にて・村道をゆく (兵庫県 高垣裕子)(高野公彦選)


 (なんともユーモラスでおだやかな村の景色だ。)