2015年3月16日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第90回です。
【俳句】
ひどい目に・会った職場の・夕桜 (松戸市 大谷昌弘)(金子兜太選)
(職場とか学校とかの集団でひとりひとりを見てくれているのは結局人ではない。)
沖縄の・血で贖(あがな)ふや・春の海 (我孫子市 岡村英)(長谷川櫂選)
(かつて「帝国臣民」意識を利用した。「利用」という発想があるかぎり「血で贖(あがな)ふ」という批判を免れまい。)
焼酎の・燗熱くする・多喜二の忌 (さいたま市 齊藤眞人)(大串章選)
(北海度農民運動に敗北し、満州に渡り、シベリア抑留で亡くなった人のことを読んでいる。多喜二の小説に別名で登場している。)
自づから・作れる闇に・藪椿 (米子市 中村襄介)(稲畑汀子選)
(他者の目を期待しないところに「美」が生じる。)
閑(しず)かにも・紅梅日和・なりし里 (枚方市 石橋玲子)(稲畑汀子選)
(筆者、代々木公園西隅に紅梅数本と10余の青テントの里を発見した。)
【短歌】
ヘビ、カエル・地になお眠る・如月を・稼ぎのために・寒く起き出づ (和泉市 長尾幹也)(馬場あき子選)
(稼ぎのためにはヘビ、カエルよりもきつい目を耐えねばならない。)
小さき声で・讃美歌うたって・いるような・土手の日向の・いぬふぐりの花 (太田市 河野公子)(高野公彦選)
(野草の花が目につく季節だ。)
ランナーの・過ぎゆきたれば・それぞれに・いつもの孤独へ・もどりてゆけり (垂水市 岩元秀人)(永田和宏選)
(生産の共同もなく、生活の共同もなければ、共感あるのは一瞬のイベントのみ。)