2015年2月23日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第87回です。

 昨夜からの雨がまだ残っている。三津五郎が亡くなった。来週には追悼句、追悼歌が殺到するだろう。


 【俳句】


 台所・世界となすや・冬籠 (藤沢市 長谷川礼而)(長谷川櫂選)


 (老齢ゆえにそういう毎日を迎える時も来るだろう。台所はそれに耐えうる多様、多彩の場である。)


 めじろ等は・寝ねよこれより・梅月夜(松戸市 村松明子)(長谷川櫂選)


 (梅月夜にめじろを登場させて色彩豊富。想像の世界ならでは。)


 春の水・抜け出て河馬の・顔となる (高槻市 会田仁子)(大串章選)


 (動物園の河馬は背中かお尻しか見せず、なかなか対面できない。)


 三月や・昔話に・せぬ集ひ (芦屋市 戸田祐一)(稲畑汀子選)


 (いつも同じ昔話なってしまう、三月は話を変えましょうという提案。筆者はいつまでも昔話でいいと思っているが。)


 ユトリロに・出会う街角・猫の恋 (宝塚市 吉藤美也子)(金子兜太選)


 (シャンソン風の俳句もたまにいいのでは。)


 【短歌】

 


 好物の・チョコ食べられぬ・病床の・父に選んで・いるバラの花 (高石市 中村玲子)(佐佐木幸綱選)

 


 (娘を持つとこういう気遣いを受けることができるのですね。)


 椿の葉に・ぱらぱらあられ・跳ねる朝・遠き君より・ランチの誘い (横浜市 中村紀子)(高野公彦選)


 (父にバラの花を選ぶ娘にはこういう面もあるか、と思っていたら一字違いだった。ランチの誘いが心にもたらす「あられ跳ねる」気持ち、いい。)


 日がな碁を・打ちて晩酌・ほろ酔いで・風呂に入りて・父逝きにけり (沼津市 石川義倫)(馬場あき子選)


 (語らないとこれだけの親爺だと思われて死んでいくことになる。)