2015年2月14日



 今国会に提出される安保法制に関する自民党・公明党の間の協議が始まった。

 協議に当たっての最大の難関は、言うまでもなく、集団的自衛権の行使を認めるいわゆる「存立事態」についての法律的処理である。(参考:本ブログ1017)

 このため、難しい問題を先送りし、協議は「グレーゾーン事態」「後方支援」「集団的自衛権の行使」という順序で行われることとなっているようである。

 したがってまず「グレーゾーン事態」についての協議の報道がなされているが、その報道ぶりについて懸念がある。

 協議がこれからどんどん進んでいくだろうが、そのような報道ぶりでは先が思いやられる。

 


 すなわち、報道ぶりは、自衛隊の活動範囲を広げたい自民、できるだけ制限したい公明という図式で、どちらの主張がより安保法制に反映するかという、平面的な問題のとらえ方なのである。

 そのような報道ぶりでは、安保法制を考える上での本質が覆い隠され、勝った負けた、どちらの党が強気だ弱腰だといったことに問題が矮小化されてしまうおそれがある。

 そのような報道の仕方は、自分たちの安保法制へのスタンスを棚に上げることができるので、報道の立場としては楽であり、報道がしばしば採りがちな立場である。

 それは、井戸端会議的、評論家的おしゃべりへの話題提供として一般からも歓迎される面をもっており、それゆえ、そのような報道ぶりがもつ問題は極めて深刻なものである。



 安保法制に関して考えられていなければならない本質的な点は次の3つである。

 すなわち、

 ① 我が国への直接的武力攻撃への対処が第一義的なことであるのは当然として、その名のもとに行われる我が国による他国への侵略あるいは内政干渉を抑止しなければならないということ。

 ② 「存立事態」、すなわち「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される危険」への対処という名のもとで行われる、アメリカとのあるいはアメリカをはじめとする有志連合メンバーになっての我が国の共同行動による、共同での侵略あるいは内政干渉を抑止しなければならないということ。(わかりやすさのために、いちばん共同する可能性があるアメリカの名を上げてある。)

 ③ ②と裏腹の関係となるが、アメリカあるいはアメリカをはじめとする有志連合からの共同行動の要求に対して明確に拒否できる根拠が用意されなければならないこと。

 である。

 これらのことを確保するための条件が法律の規定で明確にされず、内閣の判断とされるとすれば、侵略、内政干渉の抑止にまったく期待ができないということであり、共同行動の要求に事実上拒否ができないということである。



 これから自公の安保法制をめぐる協議がどんどん報道されていくことになるだろう。そして問題が細部にわたっていくことになっていくだろう。

 そうなると、問題を忠実にフォローしていない場合には、話について行くのがなかなか難しくなっていくことは避けられない。

 しかし、ことの本質を上のように押さえておけば、推移が極めて見やすくなるものと期待される。



 なお、今回のイスラム国人質事件のような場合の自衛隊による邦人救出は、実行可能性の問題は一応置いておくとして、その権能付与は自衛隊法の改正を要するものではあるが、自衛隊による警察権行使の問題であり、安保法制の議論とは別に取り扱われるべき事柄である。

 また、イスラム国のような国家とは認められない犯罪組織への取締り行動も、同じ理由によって、安保法制の議論とは別に取り扱われるべき事柄であると考えられる。

 ただし、いずれの場合も、その警察権の行使がエスカレートして対国家の戦争とならないように十分な歯止め措置が必要であることは言うまでもない。