2015年1月19日


朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第82回です。

 

 

【俳句】


 俺といふ・奴(やつ)の真赤な・マフラーかな (横浜市 本田豊明)(金子兜太選)


 (自分を俺と言う言い方にややキザを感じるわけだ。裕次郎イメージか?ところで俺は自分を何と言っているのだろう?)


 正論の・坩堝(るつぼ)と化せり・おでん酒 (高岡市 野尻徹治)(大串章選)


 (たいへんけっこう!正論が少なすぎる。)


 マスクして・心の中を・覗かるる (大阪市 西尾澄子)(大串章選)


 (同日の稲畑汀子選に「目の愁ひ・あらはにしたる・マスクかな」(岡山市岩崎ゆきひろ)があり。)


 日本人の・行きつく先の・ちゃんちゃんこ (松本市 唐澤春城)(稲畑汀子選)


 (ちゃんちゃんこをためらわせていたものとは何だったのだろうか?)

 


  【短歌】

 


 とてもとても・小さき人が・のぼりゆく・月光照らす・エスカレーター (東京都 寺澤あつこ)(馬場あき子選)

 


 (現実の情景なのだろうか?「かぐや姫」「ET」の世界。)


 北岳で・出逢いし人が・新年は・家族となるとは・夢のようなり (菊池市 児玉清美)(佐佐木信綱選)


 (事実が詩的だから、テクニックなしに詠んで好結果。)


 記念にと・五枚残して・捨ててしまう・わたしの名刺・一〇〇枚のわたし (瀬戸内市 安良田梨湖)(高野公彦選)


 (安良田さん、前週に引き続きの登場。失業されたとのこと。住所も変わっている。)


 天上に・大風の音・鳴りひびき・国上(くがみ)の山は・冬極まれり (新発田市 難波勝平)(高野公彦選)


 (安岡章太郎に「天上大風」がある。下界の人間が小さく見えます。)


 「子どものころ・お年玉が・ドルだった」・島の歴史聴く・星砂の浜 (東京都 上田結香)(高野公彦選)


 (沖縄復帰を知らない世代も多いのだろう。筆者は円に変わった直後に星砂の浜を訪問した。小柳るみ子の歌に歌われていた。沖縄返還、ベトナム戦争は遠くなりにけり。反米ナショナリズムもまた同じか?)