2015年1月12日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第81回です。
【俳句】
効く薬・なき夫(つま)の咳・飴を買ふ (町田市 坂下洋子)(稲畑汀子選)
(大きく言えば、諦念の中での生き方がここにある。)
谷間の落ち葉に・埋もれさうな茶屋 (柏原市 早川水鳥)(稲畑汀子選)
(自由律。その採用によって味わい深い日本画となっている。)
雪重く・靴重く足・なほ重く (会津若松市 高橋惇夫)(長谷川櫂選)
(この重さの連鎖から五・七・五でやっと解放される。)
傷心の・少女の視線・寒雀 (鎌ヶ谷市 梅渓由美子)(大串章選)
(この寒雀はせっせと餌をついばんでいる様子だ。)
【短歌】
「堂島川で・亀が泳いでたよ」・それだけの・LINEそれだけの・やさしさに泣く (大阪市 安良田梨湖)(永田和宏選)
(LINE使用ということはあれ、男女関係の究極的姿はこれなのではないか。いや人間関係の。)
朝方まで・大根洗って・いたような・巫女が笹振る・湯立て神事 (大和郡山市 四方護)(佐佐木信綱選)
(豊かなるローカル色。)
目を伏せて・うつむく首すじ・美しく・白鳥は・物語をまとう (草津市 山添聖子)(高野公彦選)
(この観察は日本舞踊に通じる。)
子を負(お)ぶい・掛けし手編みの・ショールをば・捨てられず今・わが腰に巻く (飯田市 草田礼子)(高野公彦選)
(子育てはかくもいい仕事。「イクメン」とかいう連中もこの境地を得られるだろうか。)