2014年12月22日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第79回です。
【俳句】
この花の・ように生きたし・枇杷の花 (横浜市 田嶋弘美)(大串章選)
(「枇杷の花」のところを自分なりに入れればいろんな句ができる。咲いて生きる気があるならば。)
熱燗や・夢は今でも・夢のまま (川西市 上村敏夫)(大串章選)
(「夢」と自覚できる「夢」はあるか?「熱燗」がその「夢」のほどを限定しているか?)
手袋を・失せはせぬかと・そればかり (横浜市 松永朔風)(稲畑汀子選)
(こども用につながって肩から掛けるものがあった。大人用にもそれでいいのではないか。)
収穫の・白菜たちの・尻を拭く (大分県日出町 松鷹久子)(金子兜太選)
(八百屋に並んでいるのはみんなきれいなお尻をしている。そこにかけられた手間に思い至らされる。)
【短歌】
Aさんが・逝けば連休・とれるのと・のり弁食べつつ・看護師つぶやく (東大阪市 朴雪子)(佐佐木幸綱選)(高野公彦選)
(「のり弁」の意味・必然性を疑問に思いつつ、それがリアリティを呼んでいることにも気づく。)
十八の・娘と並んで・寝る夜は・遅刻しそうな・夢ばかり見る (防府市 道岡加津子)(佐佐木幸綱選)
(子育て時代の記憶がそうさせるのだろうか?それとも並んで寝ることになった事情がそれを呼ぶのであろうか?)
莢蒾(がまずみ)の・朱く熟れこし・里山は・裏金小灰蝶(うらぎんしじみ)も・姿を消しぬ (東京都 上田国博)(永田和宏選)
(色彩と漢字の美。「がまずみ」は数ミリの小さな赤い実をたくさんつける植物。)
聞き役に・徹することが・できる人・まばゆい銀杏・並木のようだ (富山市 松田梨子)(永田和宏選)
(作者からしてこれはたぶん恋の歌だ。)
私から・私が遠く・なるような・微熱のつづく・冬の入口 (大阪市 安良田梨湖)(永田和宏選)
(これも作者からして恋の歌だろう。)
くぐみ鳴く・山鳩いちど・号泣せよ・胸の思いの・晴れゆくまでを (東大和市 大塚久子)(馬場あき子選)
(「くぐみ鳴く」は「くぐもった声で鳴く」の意味だろう。そういう自分に叫んでいる。)