2014年10月13日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第69回です。

 先週に引き続きの荒天です。

 


 【俳句】


 歩かねば・歩けなくなる・草の花 (札幌市 菅原ツヤ子)(稲畑汀子選)


 (「歩く」を隠喩とすれば、すでに歩かないから歩けなくなっている人が多いのではないか。草の花が見えずに。)


 新米や・越後は疾(と)うに・重き空 (枚方市 保月孝孔)(金子兜太選)


 (今年の低米価、収穫の喜びの秋はなく、すでに気分は初冬か。)


 さといもの・はっぱはあめの・すべりだい (八女市 くまがいすずな)(金子兜太選)


 (そのおもしろさからめがはなせない。)


 鹿が来て・大仏殿に・行けといふ (京都市 飯村弘)(長谷川櫂選)


 (導かれて生きていくことの心の平安。)


 廃鉱の・街の真中の・猫じゃらし (桐生市 松原橋人)(大串章選)


 (じゃらす猫もいない寂しさ。)


 【短歌】

 


 退院の・三人(みたり)に一人・迎えなき・病院の秋・彼岸花赤し(西条市 亀井克礼)(永田和宏選)

 


 (彼岸花をもって迎えとなす、か?)


 ぼくも非正規・きみも非正規・秋がきて・牛丼屋にて・牛丼食べる (小平市 萩原慎一郎)(永田和宏選)(馬場あき子選)

 


 (非正規による貧困の象徴として牛丼は違うと思う。みんな3百円の牛丼食べている。選者、誤れり。)


 胸張って・税金無縁の・頬かぶりが・国会議事堂・前を通ります (ホームレス 坪内政夫)(高野公彦選)


 (この居直り的、やけくそ、から元気、対話非成立の精神が危険なのだ。酔っぱらって喧嘩するほかないじゃないか。短歌としてはよし。)