2014年10月6日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第68回です。
豪雨の中、朝刊は配達されていました。ありがたいことです。
【俳句】
立ち飲みの・店に芒(すすき)の・挿されある (柏市 物江里人)(大串章選)
(ごく普通のことであろうが、ここに日本の凄さがある。ということを「ナショナリスト」の人たちはわかっているのだろうか?)
セザンヌの・色になりたる・林檎かな (いわき市 坂本玄々)(大串章選)
(なるほど、そうだ!)
新しき・公園小さき・百日紅(さるすべり) (芦屋市 酒井湧水)(稲畑汀子選)
(百日紅の小木であることへの納得が句を呼んだ。)
ふくしまの・棄民に真っ赤な・月のぼる (福島市 池田義弘)(金子兜太選)
(赤い月、不吉。単に不吉でなく、その前兆であること、月がそう見えてしまうことに悲劇性が強まる。)
秋刀魚焼く・ただ一匹を・ぼうぼうと (東京都 重田春子)(長谷川櫂選)
(やけくそ、そこに断念の力あり。)
【短歌】
二十年・使えば今では・本物と・錯覚している・織部の小鉢 (横浜市 杉本恭子)(永田和宏選)
(短歌に詠われた俳句的世界。「名人の・ものとしておく・備前かな」)
信号が・点滅すれば・走ってた・会いたい気持ちは・甦らない (東京都 上田結香)(佐佐木幸綱選)
(口語調青春恋愛歌に違和感をもつ者だが、失恋歌にはいいものがある。)
この街の・荒廃を見る・思いして・マンションロビーに・散かれるビラ (坂戸市 山崎波浪)(佐佐木幸綱選)
(人々の棄民感、ここに現れる。広がっていくのだろう。)