2014年9月26日


 この文章はアメリカを批判するものではないということを念の為にまず言っておきたい。


 シリア領内の「イスラム国」空爆についてアメリカは集団的自衛権の行使とするとともに個別的自衛権の行使でもあることを表明した。

 このことからも明らかなように個別的自衛権とは自国の領土領海が侵された場合のみに行使されるものではない。他国領土内にある基地を攻撃すること、しかも先制して攻撃することも個別的自衛権の範囲内のことである。


 憲法9条論において集団的自衛権が認められているか否かが議論される中で、個別的自衛権は我が国に当然認められているかのごとく取り扱われている。しかし、それは誤りである。

 従来の政府解釈において我が国の武力行使が認められるのは、個別的自衛権行使のすべての場合であるわけではない。個別的自衛権のうちの先制攻撃権一般を憲法9条は認めていないのである。我が国の武力行使が認められるのは「急迫不正の侵害」がある場合に限られる。


 その根拠は9条2項にある。9条1項では個別的自衛権を全面的に認めている。敵基地先制攻撃権も1項では否定されていない。

 しかし、2項で「国の交戦権はこれを認めない。」とされている。敵基地先制攻撃権は緊急性・窮迫性がない限り明らかに「交戦権」の行使となる。したがって9条2項で禁止されている。


 「急迫不正の侵害」への対処は「交戦権」に基づくものではない。「交戦権」を云々するまでもない緊急対処を要する事態として2項の禁止対象とはされていないのである。

 


 敵基地先制攻撃は今回のアメリカの空爆に象徴されるように必ずしも緊急性、急迫性がない場合がある。作戦が選択的になされる場合、これは「交戦権」の行使と判断せざるを得ない。9条2項に違反するのである。


 憲法の文理解釈は正確、厳密になされなければならない。集団的自衛権は「交戦権」の行使であって解釈変更で容認することは不可能であり、個別的自衛権のうちの先制攻撃権も緊急性、急迫性がない限り憲法違反である。