2014年9月24日


ご存じの方はとうに前からご存じのことであったが、映画公開されたアニメ「風の谷のナウシカ」とマンガ「風の谷のナウシカ」は全然違うものである。

 アニメはマンガ制作の途中の未完成段階に作られたもので、マンガの舞台、人物、生き物等を利用しているが、言わば一般に受け入れられやすいように、劇場用に妥協して作られたものである。

 マンガは、アニメ公開後も営々と制作が続けられ、途中挫折の危機もありながら、それを乗り越えて完成に至ったものだそうである。


 筆者は、アニメとマンガが全然違うことを最近知らされて、このたび徳間書店・アニメージュ・コミックス・ワイド判全7巻でマンガ「風の谷のナウシカ」を読み終えた。

 これから読む人のためにネタバレとなることへの躊躇を覚えるが、その構想の驚くべき規模・内容を紹介せずにはいられない。


 少女ナウシカは、巨大産業文明崩壊後の地球に残ったトルメキア王国の辺境自治区「風の谷」の地域リーダーとしてスタートする。そして人類を滅亡に導く大戦争「トルメキア王国対土鬼(ドルク)諸侯国」をやめさせるべく、地域リーダーから人類規模の活躍をする人間となる。

 ここまででもかなり面白い。だが、ここまででは「驚くべき大構想」というわけにはいかない。衝撃は次の段階にある。

 ナウシカは人類滅亡の「トルメキア対ドルク」大戦争のいかんにかかわらず、人類が必滅であるべく運命づけられていることを知るのである。

 そして人類滅亡後、ある安定的な生態系、人類なき地上の天国が成立することを知るのである。

 ナウシカは虚無と直面することになる。ナウシカは虚無にギリギリまで引き込まれそうになりながら、虚無と闘う。そして虚無を乗り越えるのである。


 マンガ「風の谷のナウシカ」とはこういう物語である。ニヤニヤおじさん・作者宮崎駿の苦闘はいかばかりのものであったろうか。率直に脱帽である。