2014年8月18日



 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第61回です。

 


 【俳句】



 昼寝して・余命を減らし・をりにけり (熊本市 永野由美子)(稲畑汀子選)



 (選者は「作者の事情が悲しい」と言う。一方筆者は、人生そんなものさという作者の割り切り、自足をむしろ好ましいものと思う。)



 太陽の・恐さを秘めて・朝曇 (岡山市 伴明子)(稲畑汀子選)



 (不思議だが、朝の雲で猛暑が予知される。)



 蹴り出せし・下駄の音より・踊りそむ (坂出市 緒方こずえ)(稲畑汀子選)



 (夜の街に踊り出す心の高ぶり。)



 蛍火や・僅かにうしろ・めたきこと (川崎市 西原小百合)(金子兜太選)



 (古来、夏の夜は……。)



 香水や・やうやく眠る・六本木 (流山市 小林紀彦)(長谷川櫂選)



 (旧仮名からすると作者は高齢?この元気、筆者はもはやありません。)



 炎天に・一円玉を・拾ひけり (嘉麻市 江崎義人)(大串章選)



 (筆者も炎天と一円玉という連想がある。一円玉がほとんど無用だったときの記憶か?10%になればまたそういうことになるかも。)





 【短歌】

 


 「おいちょっと・寄ってくか」なんて・お気軽に・もう誘(おび)けんね・棺を担(かつ)ぐ (横浜市 折津侑)(永田和宏選)

 


 (担ぐのか担がれるのか、そんな時期を筆者も迎えつつある。)

 


 遊園地・コーヒーカップに・一人乗る・初老の男に・夕立が降る (横浜市 飯島幹也)(馬場あき子選)

 


 (にわかに現実のこととは信じられぬ。その男は作者か?自らをドラマ化してはいないか?)

 


 ゴキブリを・ちゃんづけで呼ぶ・ヘルパーさん・はじける笑顔で・火曜日に来る (名古屋市 松尾利男)(佐佐木幸綱選)

 


 (六本木もあれば介護もある。スズメ百まで踊り忘れず。いずれもよろしいようで。)