2014年6月11日


 事態窮迫の感があり、くどくなりますが、この問題を再度取り上げます。

 憲法解釈によって集団的自衛権の行使が容認できるかどうかの解釈の分かれ目は、第9条第2項の「前項の目的を達するため、」という文言が、保持しないとされる「戦力」と、認めないとされる「交戦権」を限定するか否か、というところにあります。解釈問題としてはこれが唯一のポイントと言っても過言ではないでしょう。


 次のような校内規則を考えてみましょう。


1 学習環境の保持という至上命題確保のため校内暴力事件の発生は厳にこれを抑止する。

2 前項の目的を達するため、学生生徒の校内への刃物持込みはこれを認めない。


 このような校内規則があったとした場合、鉛筆を削る目的で持ち込まれるナイフの所持は認められるでしょうか?

 政府自民党の見解では、「前項の目的を達するため、」という文言が「刃物持込み」の内容を制約するので、およそあらゆる刃物持込みが禁止されるのではなく、学習等に必要な刃物持込みは許容される、ということになります。

 しかし、もし校内規則を作るに当たりそのような例外を認める意図があったとすれば、「ただし、学習等に必要な刃物を除く。」とか「前項の目的を達するための限度において」とかいう文言が使われるでしょう。

 「前項の目的を達するため、」という文言は、校内暴力事件の抑止という目的と刃物持込み禁止という手段は完全に重なり合うわけではないが、予防的に、すなわち鉛筆削りが暴力沙汰に使用されることをも想定しなければならないという考えのもとに、手段を広めに採用したという意味をはらむものと考えるのが妥当な解釈でしょう。


 仮に憲法解釈が変更され、集団的自衛権行使のための立法が行われ、自衛隊に出動命令が発せられた場合、自衛隊員の命令拒否その他の訴訟の発生が予想されます。その訴訟は違憲訴訟として提起されます。その場合、集団的自衛権行使のための法律が違憲とされることは100%まちがいありません。

 政府自民党の法的吟味は徹底的に不十分です。当然多くの議員が気づいているとは思いますが、安倍首相の勢いに押されてだんまりを決め込んでいます。

 自衛隊という国家の根幹をなす大規模実力組織をそんな法的不安定性のもとにおくことが許されるはずはありません。