2014年6月10日

 

 官邸に法律顧問がいるのか疑問になってくる。

 今国会中の集団的自衛権容認の閣議決定のため、公明党を説得する材料として、集団的自衛権の行使にあたって「自衛隊を他国の領域には派遣しない」という歯止めをかけることが検討されているという。

 安倍首相は集団的自衛権の行使は憲法で許容されているとしながら、「海外派兵は憲法上禁じられているからそれはない。」などと国会で答弁している(9日参院決算委)。

 いずれもナンセンスだ。首相の国会答弁のナンセンスはナンセンスの程度がひどすぎて、これは首相個人の能力不足であり、法律顧問が関与しているとはさすがに考えられない。

 しかし、公明党への説得カードは組織的に検討されているはずであり、首相の個人プレーではないだろう。

 

 さて、「集団的自衛権の行使にあたって『自衛隊を他国の領域には派遣しない』という歯止め」は、一般的な集団的自衛権の概念からすればほとんど例外的な条件であり、もしその条件を付するとすれば、国民合意であることを示すとともに、世界各国に我が国の外交防衛の基本方針を明らかにするためにも、憲法に規定すべき事柄と言わなければならない。

 憲法で集団的自衛権を認めておきながらこの条件を付するということは、集団的自衛権のうちの1%程度のものだけを行使するということを意味するからである。最高法規である憲法で100%を認めながら、それ以下の法令レベルで1%しか認めないということは、我が国の法律体系を乱すものといわざるを得ない。ましてそれを閣議決定で行うなどということは論外である。

 官邸にまともな法律顧問がいればこのような考え方が外に出てくるとは考えがたい。

 

 集団的自衛権の行使は一般的には同盟国との条約が前提となる。条約交渉において相手国は必要な地域への自衛隊の派遣を当然のことながら要求してくる。その時に「集団的自衛権の行使にあたって『自衛隊を他国の領域には派遣しない』という歯止め」が我が国にあると要求を拒否することができるだろうか?相手国は直ちに、その閣議決定を変更すればいいではないか、その権限はあなた(首相)にあるではないか、と反論してくるはずだ。閣議決定による歯止めなどは「屁のツッパリ」にもならないのである。簡単に閣議決定は変更されて歯止めが解除されるであろう。

 

 

 政府自民党は、公明党を、そして国民一般を愚弄しているとしか思えない。