2014年6月8日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第51回です。
新聞休刊があるため1日早く掲載されました。
【俳句】
衣替え・一人で転ぶ・淋しさよ (四日市市 水越アツ子)(長谷川櫂選)
(老いの孤独ひしひし。「淋しさよ」と言わずに淋しさが表現できればさらにいい句となるはず。)
太古より・若葉の海に・人棲めり (福岡市 松田隆)(長谷川櫂選)
(われわれは照葉樹林帯棲息人類だ。)
菜殻焼く・里山一つ・けぶらせて (佐賀県基山町 古庄たみ子)(大串章選)
(豪快に火を焚く贅沢が田舎にはある。)
菖蒲湯の・男の子に戦(いくさ)・させまいぞ (さいたま市 大石大)(稲畑汀子選)
(集団的自衛権行使について考えるとき、ここを原点として考えてもらいたい。男の子たちが「水漬(みず)く屍、草生(む)す屍」と化すことの想像なくして武力行使を考えることなかれ。)
崩るるに・もう風要らぬ・大牡丹 (西宮市 吉田邦男)(稲畑汀子選)
(人に思える。)
筍の・泥を落とせば・我が子かな (東村山市 盥日央鶴)(金子兜太選)
(それは筍なのか、我が子なのか?筍なんでしょうね。)
片言の・会話赤子と・葦切(よしきり)と (藤岡市 飯塚柚花)(金子兜太選)
(葦切に誘われて赤ちゃんが対応してしまうこと、ありそう。赤ちゃんでなくても、ありそう。)
【短歌】
山谷まで・さがし歩いた・亡母(はは)と聞く・カーネーションよ・大空に咲け (ホームレス 坪内政夫)(佐佐木幸綱選)
(この人には座標軸としての母がいる。)
霧まとい・迫る不気味な・艦隊の・ごと集団的・自衛権行使 (半田市 榊原めぐみ)(佐佐木幸綱選)
(反戦短歌は理屈を詠むのではなく、このように空気を詠んでもらいたい。ブリッジで双眼鏡を見る不気味な首相の姿まで浮かんでくるではないか。)
道の駅・空の駅海の・中の駅・時間の駅と・しての我々 (神奈川県 九螺ささら)(高野公彦選)
(「時間の駅としての我々」、仏教的自然観が新しい表現を得た!)
泣きそうな・私が映る・ガラス窓・泣きやまない子を・抱きしめながら (草津市 山添聖子)(永田和宏選)
(子育て短歌、ありそうで案外少ない。期待される母親像のしばりがきついためか?)
また一人・ましな現場を・求め去る・浪江の空の・渡り鳥のごと (南相馬市 池田実)(馬場あき子選)
(公式発表が明かさない現実。道を正すには庶民大衆がこれを共有しなければならない。)