2014年5月19日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第48回です。


【俳句】 


 馬柵(ませ)越えて・夏蝶馬に・遭ひにゆく (八王子市 大串若竹)(大串章選)

 (壮大な景色の中の生き物の動き。人間もこうありたい。)


 更衣(ころもがえ)・昭和の皺(しわ)の・現るる (東京都 おがわまなぶ)(大串章選)

 (思いがけなくわいてくる感慨。ありますね。)


 落花てふ・音無き音を・積む大地  (高松市 桑内繭)(稲畑汀子選)

 (落花は大脳視覚中枢のみならず聴覚中枢を刺激するものなのであろう。) 


 職辞して・手ぶらで蝶を・追ひゆけり (東京都 宮野隆一郎)(金子兜太選)

 (これでいいのだ。第1句とも呼応する。)


 図書館を・出て藤の道・帰りけり  (愛西市 小川弘)(長谷川櫂選)

 (読書から現実に戻ったら、現実も夢のようだった。)

 


【短歌】


 咲き誇り・はげしく舞ひて・散りしのち・ゆるぎなき妊婦の・ごとき葉桜 (松山市 二神貴美恵)(高野公彦選)

 (いのちの実感についての男女の違いを思わされる。)


 知り合いに・つい話しちゃう・弱いんだ・夫の意識・もどらないこと (千葉県 野村桂子)(永田和宏選)

 (語尾で深刻が転じられる。一方、ここでも感じられる女性のたくましさ。)


 思ひ出し・笑ひの如く・風車・風行き過ぎて・より廻り初(そ)む (東かがわ市 桑島正樹)(永田和宏選)(高野公彦選)

 (法則に反する現象を感知すると「詩」が成立する。)


 「ノンアルに・して」と勧める・娘等に・「あるアルがいい」と・愚かなる母 (弘前市 神滋子)(佐佐木幸綱選)

 (時代とともに言葉は変わる。ところで「あるアル」となっているが「アルある」が正しいのでは??)