2014年5月12日

 

 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第47回です。

 数を調整しているわけではないのに、いつもほぼ同じ数になるのが不思議です。


【俳句】 


 花筏・拗ねて流れに・乗りきれず (千葉市 鈴木正義)(大串章選)

 (前にも花筏の句を選んだことがあった。花筏の動きは意味を推測させるところがある。)


 畔塗るは・夜勤の明けし・男かな  (八代市 山下接穂)(稲畑汀子選)

 (都会の人間には理解できない「農」というもの。) 


 耕すや・土を余生の・師と崇め (倉吉市 尾崎槙男)(金子兜太選)

 (無私、寡黙、絶対性、余生の師たりうる。)


 麦は穂に・吾は吉野の・旅終へし  (久留米市 永松伶子)(金子兜太選)

 (「麦は穂に」で時期のみならず、旅の期間が示唆される。)

 

【短歌】


 夜の明けを・猪(しし)の家族は・帰るらむ・罠にかかりし・瓜坊おきて (福岡県 住野澄子)(高野公彦選)

 (不条理に耐える家族の姿が浮かぶ。)


 親からは・二つ離れた・吊革で・中学生が・景色を見ている (さいたま市 黛衛和)(永田和宏選)

 (親と一緒に外出したくないという時期があった。無意識の自立志向だったのだろうか。)


 死ぬ姉の・末期の日本語・聞きとれず・オランダ人の・義兄が泣けり (三島市 渕野里子)(永田和宏選)

 (泣いた理由がいくつか考えられる。)


 わだかまり・少なき少女の・片恋の・ようにゆるりと・巻く春キャベツ (水戸市 中原千絵子)(馬場あき子選)

 (質感の一貫性が素晴らしい美しい歌。)