2014年5月5日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第46回です。


【俳句】 


 馬酔木咲く・汝(な)に疎まれて・昼の酒 (流山市 尾形ゆきお)(金子兜太選)


 (ひとり昼酒の本質を突く。)


 風はたと・止みたる後の・花吹雪  (阿南市 湯浅芙美)(長谷川櫂選)(稲畑汀子選)


 (風が吹いて花吹雪という因果の常識をくつがえす妙味。) 


 春うれひ・高くて細き・ヒールかな (彦根市 阿知波裕子)(長谷川櫂選)


 (「春うれひ」と「高くて細いヒール」にどういう関係があるのか、さっぱりわからないが、魅かれる。)


 春愁や・亡き友の家・灯火なく  (茨木市 守谷朱美)(大串章選)


 (春になったのでこの時間に外を歩く、それゆえに気づく。)

 


【短歌】


 放射能・塗(まみ)れになりて・肌出して・戯れて笑ふて・羅漢は御在す(いわき市 馬目弘平)(佐佐木幸綱選)


 (羅漢は独り身、育児もないからなあ。「御在す」の読みは「います」だろうか。)


 休み時間・子にとらはれし・カナヘビは・筆箱の中で・九九を聞きおり(久喜市 白石由紀)(高野公彦選)


 (我が少年時代にも虫好きの奴がいて、この情景があった。)


 円周率を・三でもいいと・するやうな・わけにいゆくまい・憲法解釈 (厚木市 櫻田稔)(永田和宏選)


 (三ならば近似値を得られるだろうが、先日のテレビ番組に登場した問題の責任者のはずの自民党国会議員の認識は、そこにもはるかに及ばないひどいものであって驚愕した。)


 何もする・ことなくて背を・なでている・それでもまだある・母との時間 (大和高田市 森村貴和子)(永田和宏選)


 (人と人の関係というのは、母娘に限らず、究極的にこういうかたちなのであろう。)