2014年4月3日
NHKで3月30日(日)に放映された「中村元・ブッダの人と思想セレクション⑥・空飛ぶ鳥に迹(あと)なし」(1995年放送の再編集・再放送)で、聞き手の草柳隆三氏は鋭い質問で中村元大先生に切り込んだ。
すなわち、草柳氏は、「無」の境地に達したとき心の平安が訪れると経典に説かれているが、仏教は「無」の境地に達することを目標としているにもかかわらず、経典では心の平安というものが「有」であるとすることになっているのではないか?という趣旨の質問をしたのである。
中村元先生はそれに率直に答えることなく、「無」は強く希求されていた心の平安をもたらすものだったというような答え方で、心の平安の「有」「無」についての見解を明らかにしなかった。
愚考するに、正解は「心の平安などというものもまた「無」であることは、言うまでもなく当然である。」であろう。
このことを敷衍すれば、「心の平安」などというものを求めているかぎり「無」の境地には絶対に至らないということでもあろう。
何かを得られるというような給付を売り物にした仏教修行はすべてインチキだということになる。
草柳氏にその意図があったのかどうかわからないが、その質問は現実の仏教界を根本的に批判する爆弾質問であった。
中村元先生は、その質問を受けた時、目を瞑って深く考えておられる様子をされ、結局すれ違い答弁をして終わることになった。中村元先生は質問の破壊力を十分に認識されての対応だったと思われる。