2014年1月27日




 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第32回です。



【俳句】




音楽の・止みたる如く・雪止みぬ (奈良市 吉田淳)(大串章選)



(雪が一瞬、「からん」として、青空がのぞいたりする。)



ビル風に・吹かれて七福・詣(もうで)かな (東京都 石川理恵)(大串章選)



(現代正月風景。アンバランス、それが現代。)




数の子や・頭蓋に確と・咀嚼音 (東大和市 板坂壽一)(金子兜太選)



(画数の多くて、硬い漢字が、聴覚にも、触覚にも訴えてくる。)




雁の群れ・なりその後(あと)も・その後(あと)も 

(新発田市 高木たかし)(長谷川櫂選)




(展開する空の大景色が「その後も、その後も」だ。)




逃亡者・自首したくなる・寒さかな (大東市 谷口東香)(長谷川櫂選)




(鋭い!筆者はこの鋭さが大好きだ。大発見賞。)




【短歌】




クラス会は・今年で終わり・鷗とぶ・知多の岬に・光るさざなみ 

(東京都 狩集祥子)(高野公彦選)




(中年クラス会の懐かしい再会が一時ブームになり、話題になっていた。しかし、早晩このような時を迎えるのは必至だったのである。それを受けとめる心は穏やかだ。)




入会いの・山に焚き木を・採りし父・その荷車の・納屋に掛かれる

 (笛吹市 荻原忠敬)(永田和宏選)




(放置状態の納屋の内、そこに一族の歴史が蓄積されている。納屋がある田舎だから得られる充実。)




「海ゆかば」・歌いてトーチカ・造りたる・笹子の山は・松の風鳴る 

(八戸市 山村陽一)(馬場あき子選)




(反戦、反秘密保護法、反憲法解釈変更は、このように静かに語って、力がある。)




治療費が・払えぬと泣く・隣室の・親子気遣い・癌の母逝く 

(桐生市 村松正敏)(佐佐木幸綱選)




(反格差も同様、このように語られて、力がある。そして、この歌には亡き母への敬意の表明がある。)