2013年12月16日


 朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第27回です。

【俳句】 

 飼主と・こころよりそひ・冬の犬  (米沢市 草刈邦雄)(長谷川櫂選)

 (寒さは人の心と犬の心を近づける。人と人もまたそうであること、言うまでもない。) 

 善悪を・見抜き梟・目を瞑る (岐阜県揖斐川町 野原武)(大串章選)


 (このフクロウは誰だ。ここに至って死ねる、「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」と同様の境地とも読めるが、一方、瞑目は諦念とも読める。「善だ悪だと騒ぐのは無意味」という諦念。)

 少しだけ・遠回りして・落ち葉踏む  (芦屋市 山岸正子)(稲畑汀子選) 

 (いささかの「てらい」もなく、自己顕示もない、さわやかな句。)

 零戦の・兄よ日本は・また凍る (いわき市 馬目空)(金子兜太選)

 (特定秘密保護法を取り上げた短歌がこの週に5首あったが、危機感を伝える相手の選定と「凍る」の語の採用でこの句が突出している。)

 電球の・一つ切れたる・神楽かな (廿日市市 頼経正道)(金子兜太選)

 (何と多くのことが語られているのだろう。)

【短歌】

 スマホをば・二十一世紀の・阿片とは・言い得て妙なり・今日の車内は    (東京都 高橋義子)(高野公彦選)

 (なるほど、なるほど。)