2013年11月10日
朝日新聞俳壇、歌壇からの印象句、印象歌の報告、第22回です。
【俳句】
曖昧に・生きて来たまた・秋が来た (熊本市 坂崎善門) (金子兜太選)
(ささやかな秋の感懐、ともとれるし、「曖昧に生きてきても厳然と秋は来る」という宇宙自然への驚嘆ともとれる。)
露の世に・泣いて生まれて・赤ん坊 (伊万里市 萩原豊彦) (長谷川櫂選)
(これも多様な解釈が可能な句。「露の世」という諦観に対する赤ん坊のアンチテーゼの提起が句にされたものと僕はとりたい。)
不夜城を・とほくに載せて・虫の闇 (東京都 我妻勝美) (大串章選)
(夜、奥多摩の山から新宿池袋方面を見た景色であろう。 )
【短歌】
中三の・秋がゆっくり・深まって・無口な人の・魅力に気付く
(富山市 松田梨子)
(馬場あき子選)(佐佐木幸綱選)(高野公彦選)(永田和宏選)
(歌壇常連姉妹の姉の歌。4人の選者、全員が選んだ。)
気忙しく・昼餉すませば・相席の・老女ら挙(こぞ)りて・ビール頼めり
(京都市 吉岡節雄) (馬場あき子選)
(これは軽いエピソードだが、これからの格差社会の進行はこういう違和感を増やすであろう。)
職業は・就活生です・新宿の・ハンバーガ屋で・夜行バスを待つ
(瀬戸内市 安良田梨湖) (高野公彦選)(佐佐木幸綱選)
失恋と・おなじだ履歴書・返されて・気まずい会社が・増えるってことは
(同) (永田和宏選)
(同じ作者の就活歌、3人の選者が選んだ。)
落葉松は・かそけくなりて・夕光に・金の針ちる・くらき草生へ
(三鷹市 増田テルヨ) (高野公彦選)
(日本画の大家に絵にしてもらいたい。)